242.又辞シリーズ「十牛訓 第九図 返本還元 又辞 1967年 初冬」

第九図 返本還元です。本(もと)にとって返す、元に還るということです。螺旋(らせん)が描く円は、一周して元に還りますが、それで終わりではありません。次の新たな巡りのスタートともなります。スパイラル(らせん)成長です。

 

購入先の文章は以下の通りです。

 

・以下、湘南堂書店(購入先) より

 

十牛訓 第九図 返本還元 之又辞

 用尽機関費

 尽功惺ヽ底事

 不如聲草鞋根

 断来時路百鳥

 不啼花乱紅

一千九百六十七年 初冬 天風

 

惺:さとい/賢い/さとるなどの意味

惺惺:(頭が)はっきりしている、明晰である、(意識が)しっかりしている

草鞋(わらじ):稲藁で作られる日本の伝統的な履物(サンダル)の一つ

 

 註

 機関を用い尽くして功を

 費す惺ヽ底の事聲に

 若かす草鞋根断来

 時之路百鳥啼かず花

 乱れて紅なり

  花押

 

・以下、webより

十牛訓 第九図 返本還元

 

 第九は「返本還元」と名付けられています。「元に返り源に還る」です。禅の説明ですと、「死して蘇る」(絶後再蘇)という言葉がここに現れてきます。この第九図に対しては、「死しては甦る」ことと同時に、詩の中では「花は自ら紅、水は自ら茫々」とうたわれています。第一の「尋牛」から始まって、「真の自己」になるという道を歩んできました。そして第七で「これでいい」という自分になって落ち着いてしまうと、「俺は俺だ」という自我的な自分に舞い戻ってしまう可能性が残りますから、そのような自己が第八の空円相でもう一度徹底的に打ち消されて、そして第九で甦った。ですから、「花は自ら紅、水は自ら茫々」、これがそのまま、甦った真なる自己のあり方を示しているのです。

 

茫:ぼんやりとしているさま/はるか/はてしないさま/遠い/広い

茫茫(ぼうぼう):広々としてはるかなさま。「茫茫とした大海原」「茫茫たる砂漠」