「信念とは」 木曜行修会  服部嘉夫

                          2018614

 

私は昭和36(1961) 11月病が縁で天風会に入会しました。

入会2回目の講習会で、天風先生より潜在意識を浄化して、心を積極化する方法として、観念要素更改法を教えて下さいました。

夜の寝ぎわ、鏡に自分の顔を写し、「お前、信念が強くなる!」と云えと教えを受けました。当時の私には「信念」と云うものが分かりませんでした。しかし天風先生は、今「信念」がどうゆうものか分からなくても、「信念強くなる」と云えと仰られました。

その頃天風先生は警察大学校の講師をされていました。ある時から天風先生はご多用になり、そのお役目を杉山彦一先生(後の第4代会長)に託することになり、ご一緒に車で警察大学校へ向う車内で、杉山先生が突然天風先生に「人間は何んのために修行するのですか」とお尋ねになりました。すると天風先生は即座に「信念の確立だ」と一喝されたと伺っています。

信念とは堅く信じて疑わない心のことです。信念が強ければ、何事も成就達成することが出来るのです。過去に多くの先輩がおられます。町の自転車の主人から世界のナショナルになった松下幸之助さん。少し昔には、伊勢鳥羽の海で真珠貝の養殖に成功した、世界の真珠王 御木本幸吉翁も信念の人でした。

信念は、念願達成の原動力です。ビジネス関係の書物の表紙には「信念に燃えよ!然らば汝は成功者たらん」と良く書かれています。先人覚者は信念について次のように述べています。

(1) ヘブライのソロモン 「人の値打ちは地位でもなければ

宝物でもない、人の本当の値打は信念の二文字である。」

(2) 釈迦 「信せざれば救うあたわず、縁なき衆生は度し難し」

(3) イエスキリスト 「先ず信ぜよ! さすればそなたは救われる」

(4) マホメット 「疑って迷って真理から遠ざかる者よりも、

信じて(あざむ)かれる者、汝は幸いなり」

(5) 孔子 「学は知るにあり、知って而して後行うにあり、

行うに信なくば能わず、信は万事のもと」

(6) 青い鳥のメーテルリンク 「できるだけ究めなさい。

でも分からないことは、この世に多いんだから、

そりゃもう信ずるよりはか仕方がないじゃないか」

 科学の進歩は疑惑から始まり、研究を重ねて立証し、法則を見い出すことにより進歩してきたと云われます。科学は 1+12 でないと、いけないのですが、世の中には 1+13 となる場合があります。その場合疑っていてばかりいたら、この世の中に生きていられません。科学は疑うことにより発達すると云われますが、それは誤りかも知れません。科学は万能の学問でないと云うことです。

 宇宙飛行士の野口惣一さんが云われました。「人生は深く、宇宙は広い、未知なるものと遭遇します。」と。未知の世界は分からないものゝ方が多いと云う事実がお分りでしょう。

 私達が夜寝る時、明日の朝になったら目が覚めることを信じるから寝られるのです。もし明日の朝になっても目が開かないと思ったら恐くて寝られないでしょう。私達が飛行機に乗るにも、この飛行機は事故を起さないと信じるから乗れるのです。これらは無意()的信念です。

 仕事を成就達成させようと思った時は有意()的信念を自立的にもたねばなりません。希望・目的・理想の達成には疑いのない有意信念が必要です。有意信念は相対的信念ですが、有意信念の積み重ねが絶対信念になるのです。

 絶対信念は、頭から疑ぐらない肯定と否定を超えた次元における大確信であります。江戸っ子は「旨いの旨くないのって、本当に旨い」と云いますが、知識・理性を超越した絶対的、哲学的、霊性的なもので、高度な表現です。

 天風先生は信念のない人生は、「羅針盤のないボロ船が、長途の航海に出るようなものであると云われております。信念を持たない人間は哀れで、第一人間としての使命である進化・向上と云う責務を発揮することが出来ない」と申されます。

 天風先生は続けて云われます。「どんな良い真理を聞いても又人生如何に活きるべきかと云う良い教えに接しても、信念の無い人は只急行列車に乗って、窓の外の景色をパット見たのと同じような結果になる。あゝ良い景色だなと思っている間にスッーと消え去るものである。」と信念の大切を述べておられます。

 信念を煥発する第一の手段は、心身統一法の講習会で教わる観念要素更改法の自己暗示法です。

 信念に生きるには、まず真理に対して常に純心で疑うことなく、暗示に罹り易い催眠時即ち夜の寝がけに鏡に向って、二人称で真剣に、小声を出して「お前!(あなた)信念強くなる!」と命令します。それから床に入って、思えば思う程明るく、朗らかに、生き生きと積極的なことを連想して寝てしまえば良いのです。そして朝覚ざめた時 鏡は使わずに、一人称で「俺は(私は)信念強い!」と現状に関係なく、繰り返し断定暗示を掛けることです。日中は折ある時に時ある毎に「俺は信念が強いのだ」と念押しすることが大切です。実践に当っては、情熱と意欲をもって行わなくてはなりません。そのうち除々に自信がついてきます。自信が反覆されると習慣化され、断固不抜の信念が築かれます。

 そして、信念についての天風先生のお悟りである「信念の誦句」を繰り返し、繰り返し唱和することです。すると潜在意識が積極化され、動かざること山の如き盤石の信念が確立できるのです。

 

  信念の誦句

信念 それは人生を動かす羅針盤の如き尊いものである。

従って 信念なき人生は、丁度長途の航海の出来ないボロ船の様なものである。かるが故に 私は真理に対してはいつも純真な気持で信じよう。

否 信ずることに努力しよう。

もしも疑うて居る様な心もちが少しでもあるならば、それは私の人生を汚がそうとする悪魔が、魔の手を延ばして 私の人生の土台石を盗もうとして居るのだと、気をつけよう。

天風会の合言葉「力だ!勇気だ!信念だ!」は、自分に内在する命の力を自己認証し、勇気を煥発して、信念を確立しよう」と云うことだと私は思います。

命の力を絶対的に積極化するのに必要な信念を自分のものにする方法を、難行苦行しなくて、いとも簡単に天風先生は私達にお教え下さいました。天風先生に感謝の誠を捧げると共に不断の実践を固く決意いたしましょう。